特定技能「介護」ビザとは?外国人が日本で介護職として働くために

特定技能制度とは、日本における特定産業分野での深刻な人手不足を解消するため、2019年4月に導入された外国人材の就労制度です。

その中でも「介護」分野は特に人手不足が深刻であり、外国人材の受け入れが強く求められています。
外国人の雇用制度そのものはご存じの方も多いかと思いますが、実際に受け入れを行うには多くの準備が必要です。

特定技能の仕組みでは、すぐに外国人を雇用できるわけではありません。
介護事業所(受入機関)は、まず受け入れ体制を整備した上で、雇用予定の外国人に代わって特定技能「介護」ビザの申請を行う必要があります。

本記事では、これから初めて外国人介護人材の受け入れを検討されている介護事業所様向けに、特定技能「介護」ビザの基本から手続きの流れまでを、行政書士の視点でわかりやすく解説いたします。

参考:厚生労働省介護分野における特定技能外国人の受入れについて

特定技能「介護」ビザでできること・できないこと

特定技能「介護」の在留資格を持つ外国人を雇用する場合、従事できる業務内容には明確な範囲が定められています。
日本で働く外国人が持つ在留資格(ビザ)ごとに、許可される業務内容は異なります。もし許可されていない業務を行わせた場合、事業所は法令違反として処罰の対象となり、外国人本人も強制退去となる可能性があります。

そのため、受け入れ機関(介護施設)は、できる業務できない業務をしっかりと理解しておくことが重要です。

できること

特定技能「介護」ビザで認められている業務は、主に利用者への直接的な介護サービスおよびその補助業務です。

  • 入浴・食事・排せつなどの身体介護
  • レクリエーションや機能訓練の補助
  • 利用者の移動・着替え・見守りなどの生活支援
  • 介護記録の記入など、介護業務に付随する簡単な記録業務
  • 施設内の清掃、備品の補充などの環境整備
  • 訪問介護(訪問介護事業所に所属する場合)

これらはすべて、介護サービスの提供に直接関係する業務であり、利用者の生活を支えるための実務的なサポートが中心です。

できないこと

一方で、介護の専門業務以外や管理的な業務は、特定技能「介護」では行うことができません。

  • 介護とは無関係な事務処理・経理・受付業務
  • 送迎運転、調理、清掃のみの専属業務
  • 医療行為(点滴・投薬など)
  • 他分野(製造・宿泊・外食など)の業務への従事

これらの業務を任せることは在留資格の範囲外となり、法令違反に該当します。

特定技能「介護」ビザの取得要件

特定技能「介護」の在留資格を取得するためには、一定の知識と技能を有する外国人であることが求められ、以下の条件をすべて満たしていることが必要です。

① 介護技能評価試験および日本語試験に合格していること

介護技能評価試験とは、介護の知識や実務スキルを測定するための試験で、日本国内外で実施されています。
介護業務に必要な基本的知識・技術を理解しているかどうかを確認する内容で、筆記と実技の両面から評価されます。

また、日本語力については以下のいずれかに合格していることが条件です。

  • 国際交流基金が実施する「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格
  • または、「日本語能力試験(JLPT)N4以上」に合格

いずれも、日常生活で支障のない日本語能力を持つことを証明するための基準となっています。

② 介護日本語評価試験に合格していること

特定技能「介護」分野では、他の特定技能職種とは異なり、上記の日本語試験に加えて「介護日本語評価試験」への合格も必要です。

この試験では、介護現場で必要となる、利用者との会話や職場内での報告・連絡・記録などに関する日本語能力を測定します。
介護の専門用語を正しく理解し、実務に支障がないかを確認する重要な試験です。

③ 技能実習などからの移行による試験免除

過去に「技能実習2号(介護)」を修了した外国人については、上記の試験が免除される場合があります。
これは、技能実習の中で介護の知識・技能および日本語能力をすでに習得しているとみなされるためです。

ただし、免除の対象となるかどうかは在留資格の経歴や実習内容によって異なるため、申請前に必ず確認しておきましょう。

特定技能「介護」ビザの在留期間とキャリア形成

特定技能「介護」の在留資格では、最長で5年間の在留が認められています。
この期間中に日本で介護の経験を積み、介護福祉士国家試験に合格した場合は、在留資格を「特定技能」から「介護」へ変更することが可能です。

在留資格「介護」には、特定技能のような在留期間の上限が設けられていません。
そのため、資格変更後は長期的かつ安定して日本で介護職として働くことができるようになります。

また、「介護」ビザで一定期間の就労実績を積み、収入や生活基盤などの条件を満たすことで、将来的には永住許可の取得も目指せます。

このように、特定技能「介護」は、外国人材にとって単なる一時的な就労ビザではなく、
キャリアアップと定住の道を切り開く第一歩となる在留資格といえます。

介護施設が行う手続きと義務

特定技能「介護」で外国人材を受け入れる事業所は、受け入れ前に「介護分野における特定技能協議会」への加入が義務づけられています。
この協議会は、介護分野での外国人材の適正な受け入れ・雇用環境の整備を目的とした組織であり、事前加入が必須となりますので注意が必要です。

受け入れ後に義務づけられる10項目の生活支援

外国人材を受け入れた後、介護事業所は、以下の10項目の生活支援を実施する義務があります。

  1. 事前ガイダンスの実施
  2. 出入国時の送迎
  3. 日本で生活する上でのオリエンテーション実施
  4. 住居確保や携帯電話契約などのサポート
  5. 行政機関での各種公的手続きへの同行
  6. 外国人からの相談・苦情への対応体制の整備
  7. 日本人との交流機会の提供
  8. 日本語学習の機会の提供
  9. 会社都合による退職時の転職支援
  10. 母国語での定期的な面談の実施

これらの支援は、外国人材が安心して日本で生活し、円滑に職場に定着するために欠かせないものです。
支援内容を具体的に記載した支援計画書の作成も義務づけられているので、しっかり準備しておきましょう。

登録支援機関との連携がおすすめ

これらすべての支援を自社のみで実施するのは大きな負担となります。
そのため、実務的には「登録支援機関」などの外部サポート機関と連携し、
一部または全ての支援業務を委託する方法が一般的です。

特定技能「介護」ビザ申請の流れ

外国人本人が各種試験に合格し、受入れ事業所側でも「介護分野における特定技能協議会」への加入や生活支援体制の整備が完了したら、いよいよ在留資格(ビザ)の申請を行います。

提出書類の一覧

申請時には、以下の書類を揃えて入管(出入国在留管理局)へ提出します。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 申請人本人の顔写真
  • 申請人のパスポート(またはコピー)
  • 日本に在留中の場合は在留カード
  • 各種試験(介護技能評価試験、日本語試験など)の合格証明書
  • 受入企業の概要・規模を証明する書類(登記事項証明書、決算書など)
  • 雇用契約書の写し
  • 生活支援計画書 

※申請内容や外国人の経歴によって、追加資料を求められる場合もあります。

審査期間と注意点

申請書類を提出してから、結果通知までの期間はおおむね1~2か月程度が目安です。
ただし、提出書類に不備や記載漏れがある場合は、審査が長引いたり、補正指示が入る可能性があります。

そのため、初回申請の際は特に、漏れのない書類準備と整合性の確認が重要です。
行政書士などの専門家に依頼して事前チェックを行うことで、スムーズな申請につながります。

ビザ交付後の流れ

審査が完了し、無事に在留資格認定証明書が交付されたら、特定技能「介護」のビザが発給されます。
入国後は、在留カードを受け取り、正式に介護職として就労開始することができます。

参考:出入国在留管理庁 在留資格「特定技能」

まとめ

特定技能「介護」ビザを活用した外国人材の受け入れは、介護現場の人手不足を補い、施設の運営を支える大きな力となります。
しかし、その運用には在留資格ごとの業務範囲の理解、受入体制の整備、生活支援の実施、適切な申請手続きなど、多くの準備が必要です。

そして特定技能「介護」は、外国人材にとってもキャリアアップや安定した就労への道を開く在留資格です。
受入れ施設としても、制度を正しく理解し、準備をしっかり行うことが成功の鍵となります。

安心・安全な受入れを実現するために、まずは制度の理解と体制整備から始めましょう。

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